ラーマナ・マハーリシ(一般的にはマハリシ)は、1879年に南インドの町「マドゥーラ」から、30マイル離れた村に生まれた。
家系は、バラモンの良い血筋であった。
名前は、ヴェーンカタラーマンで後に、ラーマナと呼ばれるようになった。
マハーリシとは、マハー(=大)、リシ(=聖者)、偉大な聖者という意味である。
父親は法律関係の仕事をしていた。とても、情け深い人で、貧しい人々に衣食を与えていたが、ラーマナが12歳の時に死んでしまったので、父方の叔父の家に引き取られた。
そして、叔父の家からミッションスクールに通うことになる。
そこで、学校を運営していたアメリカ人の宣教師達から、英語の初歩を習い覚えた。
ラーマナが17歳のある日、それは永遠に叔父の家を去る6週間前のことであった。
ラーマナは2階の部屋で一人で座っていた。
その時、突然、説明できない不可解な死の恐怖がラーマナを捉えた。
ラーマナは、外見上はまったくの健康であったのだが、自分は今死ぬところだということに、激しく気がついた。
それは、心理的な現象であった。
何故なら、自分が死ぬべき明白な理由は、何も無かったからである。
ラーマナは、床の上にうつ伏せになって、体を伸ばし、目と口を閉じ、硬直した死体のように手足を固定した。
そして、最後に息を殺し、自分に言った。
この肉体は死んでいる。
そしてそれは、硬直して焼き場に運ばれるだろう。
次に灰にかわる。
しかし、肉体の死とともに、私は死ぬのか?
肉体は私か?
この肉体は今、沈黙して硬直している。
しかし、私はその状態とは別に、私の自己の完全な力を感じ続けている。
そして、ラーマナは、深い意識のトランスに没入した。
まさに、ラーマナは、自我の源に没入し、融合したのである。
肉体は、別個のものであり、私は死によって影響を受けることは無く、残るということを明確に理解した。
真の自己は、非常にリアルなものであり、人間の本質の中に非常に深く沈んでいる。
そして、今までそれに無知であった。
その体験の後、学校の教科書とノートを放り出して瞑想をしていたラーマナを見て、兄が激しく非難した。
その事が、直接の原因になり、家出をすることになる。
その後、聖地ティルヴァンナマライに行き、アルナチャラ寺院で衣服を脱ぎ捨て丸裸のまま深いトランス状態に没入していた。
やがて、寺院の僧侶達がその姿では困るということで、ラーマナと交渉してようやくふんどし一つ身につけるということで、折り合いがついた。
次に、マンゴーの果樹園に移り、また洞窟を転々とし沈黙を続けていた。
やがて、数年後に少しは話すようになったが、相変わらず無口であった。
この頃、一人の忠実な弟子が出来て、弟子のために多くの古典を読んであげた。
そして、マハーリシは自分が直感的に体験して把握したものが、すでに昔の賢人たちによって分析されて書かれているということを知った。
ラーマナは、いかなる師にもつかずヨーガのいかなる方法も、学んだことはない。
誰にも教わらないで、たった一度の突然の死の恐怖、そして仮死状態によって一度で究極のサマーディを体験してしまった。
インド宗教史上でも非常に稀な現象である。
驚くべき話は、毎晩、大きな虎が洞窟にやって来て、ラーマナの手を舐めた。
虎はお返しにラーマナに愛撫された。
また、ある時は大きなコブラがシューシューと音を立てながら、岩をつたってやってきて、マハーリシの前に止まった。
コブラは頭を持ち上げ首を広げた。
しかし、マハーリシは動こうとしなかった。マハーリシとコブラは、数分間お互いに向かい合い見つめ合った。
最後にコブラは、マハーリシに害を加えないで引き下がった。
そしてまたある時は、 弟子に本を読んでくれと頼んだ。
その内に、イビキが聞こえてきたので、弟子は本を読むのを止めた。
するとすぐに、マハーリシは、何故止めるのか?と言った。
そこで弟子はまた本を読み始めると、またイビキが聞こえたきたので、読むのを止めた。
するとまた、マハーリシは、何故止めるのか?と弟子に言った。
つまり、マハーリシの睡眠は、一般の人達の睡眠とはかなりかけ離れて異なっているもののようだ。
またある時は、一人の弟子が 自分の修行に進歩がないのを嘆き悲しんで、こんなことなら自分は地獄に落ちるに違いない、と言っているのを聞いてマハーリシは言った。
あなたが地獄に落ちるようならバガヴァンは、自分も降りていってあなたを引き戻してあげるよ、と言った。
マハーリシの弟子の救い方は、ダルシャンと言っていわゆる凝視であるが、燃え輝くような目を弟子のほうへ向けると、弟子は自分の雑念が破壊されて、この聖者に救われるという感覚を持ったという。
そして、自分の過去・現在・未来を全て見通されたという感じを受けたという。
ある日遠くから、大変な問題を抱えた信者がやってきて一時間以上も自分の身の上をマハーリシに喋り続け、それに対して例の如く、マハーリシは一言も発しない。
ただ、黙ってじーっと信者を見つめているだけである。
それだけで、聖者の心の波動がテレパシー的に男の心に注入され、帰る時には、男は強い心を持って帰っていく。
やがて、長男と身内に死別されたマハーリシの母親がやって来て、マハーリシに一緒に住まわせてくれと頼んだ。
マハーリシは、それを受け入れた。
そして、母親は生涯の最後の6年間を息子マハーリシと共に暮らした。